有限会社春華堂『五穀せんべい 山むすび』2023金賞受賞インタビュー

山むすび、素材と人の出会いを結ぶ

静岡と言えば、皆さんがまず思い浮かぶのは富士山ではないでしょうか。その富士山を題材にしたお菓子を目にすることも多いと思いますが、「うなぎパイ」で有名な浜松市の有限会社春華堂様では、「富士山」をテーマにしたおせんべいが登場しています。2014年7月、新たな和菓子ブランドとして「五穀屋」が立ち上げられ、そこで開発されたのが「山むすび」という五穀せんべいです。 日本人には馴染みの深い「おむすび」をモチーフにして、優美な富士山を描いた掛紙のパッケージデザインを採用しています。新たなお菓子として山むすびは、従来のおせんべいの特徴とは一味違うものにしています。山むすびは、より美味しく、より魅力的にリニューアルを行いながら、日本雑穀アワード2023《一般食品部門》において、3度目の金賞を受賞しました。今回、ブランドへの取り組みをお聞きしたく、ブランド戦略室開発チームの細田美穂さんにお話を伺いました。

最初に五穀屋のブランドコンセプトを教えていただけますか?

五穀屋のブランドコンセプトは「からだにおいしい和の知恵菓子」です。五穀と発酵という新しい要素でお菓子を作っています。昔からある定番なお菓子ではなく、新しいエッセンスを取り入れた新商品作りを目指しています。


5種類の五穀せんべい 山むすび(職人醤油白たまり、梅かつお、金沢いしる、黒たまり、七福米塩)

そのコンセプトの中で生まれた『五穀せんべい 山むすび』ですね。

一般的なおせんべいの製造は、うるち米を製粉し、蒸して成型、その後乾燥させて焼きあげます。しかし、私たちの山むすびは粒感のある、見た目にもおむすびの形です。米を粉にするのではなくそのまま蒸して、おむすびの形に成型、乾燥後、米油で揚げて、味付けを行っています。
山むすびは、現在5種類の味が楽しめますが、今回日本雑穀アワードで金賞をいただいたのは、職人醤油の黒たまりと七福米塩の組み合わせです。黒たまり醤油は、愛知県知多郡にある南蔵商店様の「つれそい」を使用しています。実際に訪問し作り手の想いを感じられたこと、そして100年超の木桶で3年の歳月を経てじっくり熟成された濃厚で旨みのある味わいで、山むすびの材料に使うことを決めました。

今回、金賞を受賞された『五穀せんべい』七福米塩と黒たまり

具体的には、どのように山むすびに活用されているのでしょうか?

3年熟成されたたまり醤油を、お米を水に浸漬させる段階で加え、蒸し上げています。さらに、米油で揚げた後に再度醤油を塗ることで、一層香ばしさを引き立てています。ありふれた味ではないおせんべいを作るために、何度も試作を繰り返しました。企画から1年半、日本の風土と人との出会いを大切にしながら、想いをのせた商品が完成したときはとてもやりがいを感じました。

もうひとつの七福米塩について教えてください。

七福米塩は、名前のとおり7種類の穀物を使い、生地に力を注いでいます。宮古島の塩でシンプルに仕上げ、味に深みをもたせるため鰹節の粉末を加えました。穀物のやさしい甘みから「お米らしさ、雑穀らしさ」を感じられるのがポイントです。どの商品でも素材の産地や特徴、味の組み合わせなど、こだわりを持って取り組んでいます。

パッケージのデザインにもこだわりがありますね。

はい、山むすびのパッケージは “おむすび” を入れる竹かごをイメージしています。箱の側面を折るのが通常ですが、このパッケージは折り紙を折るように手で組み立てながら側面を湾曲させています。

手土産にも最適、富士山のイラスト入りパッケージも人気の理由

山むすびは、今回で3回目の金賞を受賞されました。

本当にうれしいです。自信を持ってお客さまにおすすめできますね。受賞した当初と今では山むすびの醤油味をリニューアルしているので、今回もチャレンジしました。

受賞後に新たな課題が見つかる場合もあるのですか

おいしいことには変わりがなくても、せんべいの食感の敵でもある湿気により賞味期限を長くして販売できない点など、工場で生産してから気づくこともあり改善が必要でした。解決に向けて試行錯誤をしながら、時に味付けそのものを変える決断をすることもあります。

今後、山むすびはどのような形で食べてもらいたいのでしょうか?

雑穀のお菓子をあえて選んで食べるという人は少ないと思いますが、日頃から雑穀を食べていない人でもなんとなく、お土産でもらって食べてみたら雑穀だった、おいしかったから次も食べたいといった、気軽なスタンスで食べてもらえたらと思っています。また、雑穀のお菓子なら安心して罪悪感を持たずに楽しく食べられます。これからも、全国の良い素材を探しながら、山むすびの魅力を引き出していく予定です。


お菓子の新しい文化とスタイルを発信する直営施設、浜北スイーツ・コミュニティ『nicoe』

細田さんご自身も毎日食べるごはんに雑穀を入れているそうですね。

はい、その通りです。小さな雑穀の粒には栄養価が高いだけでなく、自然の優しい粒の色合いにより食卓が華やかになります。また、業務で発酵を勉強しているため、時々雑穀の甘酒を作ったりして取り入れています。雑穀は主食として食べるだけでなく、いろいろなおかずやスープに入れることも可能です。不足しがちな栄養素を上手に取り入れることができるため、雑穀は日々の健康に本当に一役買っていると思います。

最後に今後の展望をお聞きしたいと思います。

日々、山むすびの商品開発は進んでいて新商品を計画中です。これからも山むすびのおいしさを広めるために、各地でのご縁をつなぎ、熱意ある生産者さんに出会いながら、良い素材を見つけて新しい味の山むすびを作りたいですね。気の利いたお土産を、いつもと違うところで買いたい、おしゃれなおせんべいを選びたい、そのような声に応える商品になるよう、商品開発を続けていきます。そして、来年、再来年も日本雑穀アワードに連続受賞して殿堂入りを果たしたいと思っています。


nicoe内の五穀屋店舗の前で細田美穂さん


これからも五穀屋ブランドのさらなる発展と、山むすびのさらなる進化を期待しています。ありがとうございました。

受賞商品紹介ページ
五穀せんべい 山むすび


有限会社春華堂
https://www.shunkado.co.jp/
五穀屋ブランドサイト
https://gokokuya.jp/
浜北スイーツ・コミュニティ『nicoe』
https://www.nicoe.jp/